社会的治癒とは何ですか?

「社会的治癒」とは、「医学的治癒」とは別概念であり、社会保障(障害年金,傷病手当金)制度独自の概念です。

初診日」につぎのような具体例があり、この中に出てくる「治癒」はその言葉通り「病気やけがが治ること」という場合以外に「社会的治癒」も含まれ、この「社会的治癒」が認めれれる場合は、同様に過去の傷病と再発傷病は別傷病とされます。
「過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日」

この「社会的治癒」は、下記の裁決例にも書かれていますが、本来の「初診日」では「保険料納付要件」を満たさない場合や国民年金加入である場合、その後「社会的治癒」に該当する期間が一定期間あり、その後新たに受診した「初診日」では「保険料納付要件」を満たしたり、厚生年金保険加入であるような場合、請求者を救済あるいは請求者がより有利になるように考え出されたものです。

したがって、これも書かれていますが、保険者が逆にこの「社会的治癒」を持ち出して、被保険者の訴えを否定することは出来ないことになっています。

例えば、「平成23年12月1日 採決例による社会保険法 第2版 発行 民事法研究会」には下記の通り書かれています。

社会的治癒とは、傷病が医学的な意味では治癒したとはいえないが、その症状が消滅して社会復帰が可能となり、かつ、治療投薬を要せす、外見上治癒したと見えるような状態がある程度の期間に渡って継続することであり、保険給付上はこれを治癒に準じて扱うことが承認されている。もっとも、治療投薬については、全くこれをしない状態であることは必すしも必要ではなく、維持的・経過観察的な治療が継続していても社会的治癒の成立を妨げないとされる。社会的治癒は、傷病の治癒に関する一般人のいわば素朴な感覚を尊重し、これに基づいて初診日の設定を行うことにより、保険給付の充実を図ろうとするものであって、いわば被保険者の救済の為に考えだされた法理であり、その性質からいって、保険者の側でこの法理を持ち出し、保険給付をしないための論理とすることは出来ないものと解すべきものである。

「社会復帰が可能となり」・・・一般的な社会生活を送ることができる状態(就労,学
              業,家事等)で、自身,他者もそのように見て取れる状態
「ある程度の期間に渡って継続すること」・・・概ね5年以上と言われています