初診日とは何ですか?

この「初診日」とは「障害の原因となった傷病につき、始めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」と規定されています。

簡単に言いますと、ご病気で具合が悪くなったり、ケガをされて最初に病院に行った日を「初診日」と言います。

また、「「傷病」とは、疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病を総称したものをいい、「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである」とされています。

まず、「初診日」の前に「発病日」が有るのですが、この「発病日」とは「一般的に傷病の発病時期は自覚的、他覚的に症状が認められた時とするのが原則である。ただし、先天性の傷病にあっては、潜在的な発病が認められたとしても通常に勤務していた場合は、症状が自覚されたとき又は検査で異常が発見されたときをもって発病とする。」とされています。

具体的にはつぎのような場合を「発病日」としています。
(1)医師の診療を受ける前に本人の自覚症状が現れた場合は、その日
(2)自覚症状が現れずに医師の診療を受けた場合は、初診日
(3)慢性的疾患(糖尿病、腎不全等)のように傷病の病歴が引き続いている場合は、最も古い
   発病日
(4)過去の傷病が治癒(社会的治癒を含む)し再度発症した場合は、再度発症した日
(5)健康診断で異常が発見された場合は、異常の程度により健康診断日
(6)事故の場合は、事故が発生した日
(7)じん肺症(じん肺結核を含む)については、永年にわたり鉱山又は石エ等の業務に
従事し、珪石粉塵を徐々に吸入した結果発する業務上の疾病であり、その業務に
従事した厚生年金保険の被保険者期間があれば 被保険者期間中の発病とされる
(8)先天性心疾患、網膜色素変性症等については、通常に勤務し厚生年金保険の被保
険者期間中に具体的な症状が出現した場合は、その日
(9)先天性股関節脱臼については、完全脱臼したままで生育した場合は、厚生年金保険の期間
外発病となるが、それ以外のもので青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、
症状が発症した日

そして、その次に来る「初診日」は具体的にはつぎのような日とされています。
(1)初めて診療を受けた日(治療行為又は療養に関する指示があった日)
(2)同一の傷病で転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日
(3)過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診
   療を受けた日
(4)傷病名が確定しておらす、対象傷病と異なる偏病名であっても、同一傷病と判断され 
   る場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
(5)じん肺症(じん肺結核を含む)については、じん肺と診断された日
(6)障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があると
   きは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
(7)先天性の知的障害(精神遅滞)は出生日
(8)先天性心疾患、網膜色素変性症などは、具体的な症状が出現し、初めて診療を 
   受けた日
(9)先天性股関節脱臼は、完全脱臼したまま生育した場合は出生日が初診日、青年
     期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、発症後に初めて診療を受け
       た日

下記の点について、注意が必要です。
①過去の傷病が治癒したのち再び同一傷病が発症した場合は、再発として過去の傷病とは
 別傷病としますが、治癒したと認められない揚合は、傷病が継続しているとみて同一傷
 病として取り扱われます。
②障害年金の初診日は、医師又は歯科医師の診療を受けた日とされていますので、整骨
 院、ほねつぎ、鍼灸院等は「初診日」と認められません。
③発達障害(アスペルガー症候群や高機能自閉症など)は、自覚症状があって初めて診療
 を受けた日が初診日となります。
  知的障害(精神遅滞)とは異なるので注意してください。
④健康診断を受けた日(健診日)は、原則「初診日」として取扱われません。
 ただし、 初診時(最初に受診した医療機関)の医師の証明が添付できない場合であって、 
 医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合については、健診
 日を証明する資料(人間ドックの結果など)を提出することで「初診日」として認めら
 れる場合があります。

「相当因果関係」に関する具体的な取扱いはつぎの通りとされています。
【相当因果関係あり】
(1)糖尿病と糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害,糖尿
   病性動脈閉鎖症)
(2)糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎または慢性腎炎に罹患し、その後
   慢性腎不全を発症したもの(両者の期間が長いものであっても)
(3)肝炎と肝硬変
(4)結核の化学治療法による副作用としての聴力障害
(5)手術等の輸血による肝炎
(6)ステロイド投薬が必要な傷病でその副作用による大腿骨頭無腐性壊死
(7)事故または脳血管疾患による精神疾患
(8)肺疾患に罹患し手術を受け、その後生じた呼吸不全(両者の期間が長いものであって
   も)
(9)転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致、または転移であることを確認
   できたもの

【相当因果関係なし】
(1)高血圧と脳出血、脳梗塞
(2)糖尿病と脳出血、脳梗塞
(3)近視と黄斑部変性、網膜剥離、視神経萎縮

上記注意の①にある「治癒」はその言葉通り「病気やけがが治ること」という場合以外に「社会的治癒」も含まれ、この「社会的治癒」が認めれれる場合は、同様に過去の傷病と再発傷病は別傷病とされます。

「社会的治癒」とは、「医学的治癒」とは別概念であり、社会保障(障害年金,傷病手当金)制度独自の概念です。

この「社会的治癒」は、下記の裁決例にも書かれていますが、本来の「初診日」では「保険料納付要件」を満たさない場合や国民年金加入である場合、その後「社会的治癒」に該当する期間が一定期間あり、その後新たに受診した「初診日」では「保険料納付要件」を満たしたり、厚生年金保険加入であるような場合、請求者を救済あるいは請求者がより有利になるように考え出されたものです。

したがって、これも書かれていますが、保険者が逆にこの「社会的治癒」を持ち出して、被保険者の訴えを否定することは出来ないことになっています。

例えば、「平成23年12月1日 採決例による社会保険法 第2版 発行 民事法研究会」には下記の通り書かれています。

社会的治癒とは、傷病が医学的な意味では治癒したとはいえないが、その症状が消滅して社会復帰が可能となり、かつ、治療投薬を要せす、外見上治癒したと見えるような状態がある程度の期間に渡って継続することであり、保険給付上はこれを治癒に準じて扱うことが承認されている。もっとも、治療投薬については、全くこれをしない状態であることは必すしも必要ではなく、維持的・経過観察的な治療が継続していても社会的治癒の成立を妨げないとされる。社会的治癒は、傷病の治癒に関する一般人のいわば素朴な感覚を尊重し、これに基づいて初診日の設定を行うことにより、保険給付の充実を図ろうとするものであって、いわば被保険者の救済の為に考えだされた法理であり、その性質からいって、保険者の側でこの法理を持ち出し、保険給付をしないための論理とすることは出来ないものと解すべきものである。

「社会復帰が可能となり」・・・一般的な社会生活を送ることができる状態(就労,学
              業,家事等)で、自身,他者もそのように見て取れる状態
「ある程度の期間に渡って継続すること」・・・概ね5年以上と言われています

つぎに、この「初診日」が何故非常に重要かと言いますと、この「初診日」になんの年金に加入していたか?国民年金?厚生年金?これによって受給できる貰える年金が「障害基礎年金」になるのか?あるいは「障害厚生年金」になるのか?すなわち貰える障害年金の種類、額が違ってくるということです。

また、国民年金に加入していた時に初診日が有った場合に受給出来る「障害基礎年金」には障害等級が1級と2級がありますが、厚生年金に加入していた時に初診日が有った場合に受給出来る「障害厚生年金」に1級と2級の他に3級も有り、より広くカバーされます。

また、「初診日」が決まりますと、この「初診日」から1年6か月後の障害の程度を定める日、「障害認定日」と呼ばれる日が決まり、この日の状態で障害等級が決まり、以降障害年金を請求できるようになります。

例えば、「初診日」すなわち最初に病院を受診した日が令和4年4月1日だとしますと、これから1年6か月経過した日すなわち令和5年10月1日が「障害認定日」になります。