障害年金の請求を検討しているのですが、初診が10年以上前で初診日の証明が難しいと思っています。色々調べていると、この初診日の証明に関する取扱いが変わり、証明方法が多くなったと聞きました、教えて下さい。

厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令(平成27年厚生労働省令第144号)が平成27年9月24日に公布され、 平成27年10月1日から施行されたのに伴い、これに係る事務の取扱いついて、「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」(平成27年9月28日付け年管発0928第6号通知)が発出されました。
※平成31年2月1日に「「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」の一部改正について」(年管管発0201第7号通知)が発出され、一部の改正が行われました。


大きな改正点はつぎの通りです。
【第三者証明】
1.20歳前に「初診日」がある場合は、「初診日」を証明する書類が「第三者証明」のみの場合であっても、「第三者証明」の内容を総合的に勘案して、申立ての「初診日」を認めることができるとされました。

これ以前、平成23年12月16日に「20歳前障害による障害基礎年金の請求において初診日が確認できる書類が添付できない場合の取扱いについて」(年管管発1216第3号通知)が発出され(年管管発0928第6号通知発出に伴い廃止)、「20歳前の傷病による障害基礎年金」については、「第三者証明」を「初診日」を明らかにする書類として取り扱うこととされていましたが、今回の通知により、20歳前に「初診日」がある場合は、「初診日」を証明する書類が「第三者証明」のみの場合であっても、申立ての「初診日」を認めることが明確にされました。

2.20歳以降に「初診日」がある場合は、「第三者証明」を「初診日」を合理的に推定するための参考資料とするものの、「第三者証明」だけでは認められず、更に参考となる他の資料の提出が必要であり、これらの資料の整合性等を確認の上、申立ての「初診日」を認めることできるとされました。

なお、「第三者証明」は原則として複数必要ですが、単数でも相当程度信憑性が高いと認めれれるものであれば、「第三者証明」として認められます。

3.また、「初診日」が20歳前,以降に関わらず、「初診日」頃に請求者が受診した医療機関の担当医師、看護師その他の医療従事者による第三者証明については、「初診日」頃の請求者による医療機関の受診状況を直接的に見て認識していることから、 医証と同等の資料として、申立ての「初診日」について参考となる他の資料がなくとも、 当該第三者証明のみで「初診日」を認めることができるとされました。

【初診日が一定の期間内にあると確認された場合の初診日確認の基本的取扱い】
1.「初診日」を具体的に特定できなくても、一定の期間の始期および終期を参考資料により特定することにより、その一定期間内に「初診日」があると確認された場合であって、下記3又は4に該当するとき、 一定の条件の下、申立ての「初診日」を認めることができるとされました 。

2.始期および終期に関する参考資料はつぎのものになります。
・始期に関する参考資料
✔ 請求傷病に関する異常所見がなく発病していないことが確認できる診断書等の資料
(就職時に事業主に提出した診断書、 人間ドックの結果など)
✔ 請求傷病の起因及び当該起因の発生時期が明らかとなる資料
(交通事故が起因となった傷病であることを明らかにする医学的資料及び交通事故の時期を証明する資料、職場の人間関係が起因となった精神疾患であることを明らかにする医学的資料及び就職の時期を証明する資料など)
✔ 医学的知見に基づいて、一定時期以前には請求傷病が発病していないことを証明する資   料

・終期に関する参考資料
✔ 請求傷病により受診した事実を証明する資料
(2番目以降に受診した医療機関による「受診状況等証明書」など)
✔ 請求傷病により公的サーピスを受給した時期を明らかにする資料
(障害者手帳の交付時期に関する資料など)
✔20歳以降であって請求傷病により受診していた事実及び時期を明らかにする「第三者証明」

3.一定の期間中、同一の公的年金に継続して加入していた場合
一定の期間の全てにおいて、国民年金のみに加入あるいは厚生年金保険のみに加入など同一の公的年金の加入期間となっており、いずれの時点においても、「保険料納付要件」を満たしている場合は、 当該期間中で申立ての「初診日」を認めることができるとされました 。

4.一定の期間中、異なるの公的年金に継続して加入していた場合
一定の期間において国民年金と厚生年金など、年金制度は異なるものの、全ての期間を通  して公的年金に加入しており、かつ障害年金を支給するための「保険料納付要件」を満たしている場合は、参考となる他の資料とあわせて申立ての「初診日」を認めるこができるとされました 。
なお、 申立ての「初診日」が国民年金の加入期間である場合は、他の参考資料は不要です。

【その他の初診日の取扱いについて】
1.請求者の申立てに基づき医療機関が過去に作成した資料の取扱いについて
請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に申立ての「初診日」が記載されていいる場合には、 「初診日」と 認めることができるとされました 。
例えば、5年以上前のカルテに基づいて作成された2番目以降に受診した病院の「受診状況等証明書」や「診断書」に申立ての「初診日」が書かれている場合などです。

2.診察券等における初診日確認の取扱いについて
診察券や医療機関が管理する入院記録等により確認された「初診日」及び受診した診療科については、 請求傷病での受診である可能性が高いと判断できる診療科(精神科など)である場合には、それらの参考資料により「初診日」を認めることができるとされました 。

3.健診日の取扱いについて
健康診断を受けた日(健診日)は「初診日」として取り扱わないこととされました。(例外有り)

4.日付が特定されない初診日の取扱いについて
資料により「初診日」のある年月までは特定できるが日付が特定されない場合には、 当該月の末日を「初診日」とされます。
例:令和4年1月頃→令和4年1月31日
ただし、当該月に異なる年金制度に加入していた場合は除かれます。

また、医証に「○年頃」のように年までしか記載されていない場合は、当該医証のみによる申立ての「初診日」は認められません。
ただし、「○年春頃」のように季節まで記載されている場合は、以下の日付を初診日として認めることができるとされました 。
冬:2月末日 春:5月末日 夏:8月末日 秋:11月末日

なお、「一定の期間」を確認するための始期及び終期の判断に際しては、原則以下のとおりとされています。
 ・一定の期間の始期と終期について判断できる場合
  「○年ごろ初診」→始期:○年1月1日、終期:○年12月31日
  「○歳ごろ初診」→始期:○歳の誕生日、終期:○ + 1歳の誕生日の前日
 ・ 一定の期間の始期について判断できる場合
  「○年ごろ発病』→始期:○年1月1日
  「○歳ごろ発病」→始期:○歳の誕生日

5.初診日を確認する際の留意事項について
今回の通知に有る内容に限らず、「初診日」の確認に当たっては、 「初診日」の医証がない場合であっても、 2番目以降の受診医療機関の医証などの提出された様々な資料や、 傷病の性質に関する医学的判断等を総合的に勘案して、申立てによる「初診日」が正しいと合理的に推定できる場合は、 請求者申立ての「初診日」を認めることができるとされました 。
すなわち、あきらめずにあらゆる参考資料を集め、証明していくことが重要になります。

6.20歳前障害基礎年金の初診日確認の添付書類の取扱いの緩和について
(「「障害年金の初診日を明らかにすることがで きる書類を添えることができない場合の取扱いについて」の一部改正について」(年管管発0201第7号通知))
改正前は、「初診日」時点の年齢にかかわらず、「初診日」を証明する書類(受診状況等証明書)の添付が必要でした。
改正後は、2番目以降に受診した医療機関の「受診日」により、「障害認定日」が20歳到達日以前であることが確認でき、かつ、その受診日前に厚生年金等の加入がない場合は、最初に受診した医療機関の初診日証明の添付が不要となりました。