脳出血による肢体の障害で障害厚生年金2級を受給できたケース

ご相談者様男性(50代)
傷病名脳出血
決定した年金の種類と等級障害厚生年金2級
受給決定額年額約244万円
遡及支給額 約1,092万円(4年4か月分)

ご相談内容

以前お話をさせて頂いたことのある病院の相談員さんからのご紹介でした。

お話をお伺いしますと、4年半ほど前、会社での仕事中に何の前触れもなく突然手に力が入らなくなり、病院に救急搬送され、CT検査の結果、「脳出血」と診断、緊急手術を受けられていらっしゃいました。

結果、半身に重い麻痺と足の痺れと痛みが残りました。
手術を受けた病院およびその後転院した病院でも、リハビリを続けられましたが、実感できるほどの改善はほとんど無かったそうです。
一方、足の痺れと痛みは日に日に強くなっていました。

今現在は、何とか復職し、従来の3倍の時間を掛けて通勤されていますが、仕事中座っているだけでも足の痺れと痛みが増し、帰る時は満身創痍なんとかかんとか帰宅するような状態でいらっしゃいました。

当センターのサポート

今回の傷病である「脳出血」は「障害認定日の特例」に該当し、 「初診日」から6月経過した日以降に、医学的観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるときは、その日が「障害認定日」とされ「障害年金」が請求できることになっています。
(詳細は下記【ポイント】をご確認下さい)

しかし、今回のお客様の場合、2つ目のリハビリ目的で入院していた病院で、「初診日」から6月経過2週間ほど前に、医師から「これ以上リハビリを続けても効果は見込めないが、入院を続けますか?」と聞かれ、当然ですがその時点で退院をすることにしました。
そこで、退院直前に病院側の勧めで身体障害者手帳申請のために、関節可動域や筋力の検査が行われました。

病院側としては、親切心から暗に退院を勧めたのでしょうが、この「初診日から6月経過2週間ほど前の検査」以外に遡及請求に必要な診断書に記載できる検査結果がなく、今回の「障害年金」の請求手続きで問題になりました。

というのは、下記【ポイント】に詳しく書いていますが、日本年金機構の業務マニュアルで「 初診日から起算して6月を経過するまでは、症状が固定しているとはみとめられない」 と指導されているからです。
すなわち、我々請求側からすると、「2週間くらい早い時期の検査結果でも、6月経過時点と変わらないでしょう」という前提での請求になりますが、日本年金機構での審査時に上記規定を持ち出され、「この診断書では認定できません」とならないとは限らないと心配されたからです。

という訳で、「申立書」を準備し、その中で「これ以上リハビリを続けても効果は見込めず、暗に退院を勧められたこと」、すなわちその時点で医師が「症状固定」だと判断していたことなどを申立てました。
また、医師に本件ご相談し、診断書にも「検査時の状態と2週間後(初診日から6月経過後の障害認定日)の状態は同様と判断できる」とのコメントを頂くことができました。

あとは、日本年金機構での審査に委ねるしかないという思いで、結果を待ちました。

※大抵の病院では、「身体障害者手帳」まではよくご存じなのですが、「障害年金」のこ
 とまではご存じでない場合が多いと感じています。
 それほど、「障害年金」(の請求)が複雑であるということだと思います。
 仕事柄、病院の相談員さんと話をする機会が多いのですが、「「傷病手当金」,「身体
 障害者手帳」までは分かるのですが、「障害年金」のことは・・・」というお話をよく
 お聞きします。

 今回のように、良かれと思って、初診日から6月経過前(早いと2,3月)に「身体障害
 者手帳」申請のために検査をしてしまい、今回のケースでは2週間程度早かっただけだっ
 たので認められましたが、これが1月,2月早いとなるとどうなるか分かりませんし、実
 際その結果「障害年金」を請求できないケースもあります。

 ですので、できれば、病院の方から「障害年金」受給の可能性のある患者さんには、初
 診日から6月経過日以降の検査を案内してもらえると、遡及請求ができない(受給できる
 「障害年金」の診断書が取れないばかりに、受給できない)ということを防げるのでは
 ないかといつも思っています。

 そのために、我々「障害年金」に関わる社労士も病院の相談員さんと話すような機会に
 ご案内するとか、日本年金機構としても病院にそのような案内をするようなことができ
 ないものかと常々考えています。

【ポイント】(脳出血(脳血管障害)の障害認定日の特例に基づく請求について)
「脳出血」は「障害認定日の特例」に該当し、「障害認定基準」の第9章/神経系統の障害の中で、次の通り規定されています。
ただし、「障害認定日の特例」に該当する他の傷病と違い、単に「初診日」から6月経過した日が必ず「障害認定日」となるという訳でなく、「 医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき 」という条件を満たす必要があり、診断書を書いて頂く医師が「症状固定している」と医学的に判断し、また日本年金機構での審査においても「症状固定している」と認定される必要がありますので、注意が必要です。

神経系の障害により次の状態を呈している場合は、原則として初診日から起算して 1 年 6 月を経過した日以前であっても障害認定日として取り扱う。
・脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6月経過した日以降に、医学

 的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき。

一方、日本年金機構の業務マニュアルでは、次の通り書かれており、「初診日から6月経過」を厳格に運用するよう指示されています。

・初診日から起算して6月を経過するまでは、症状が固定しているとはみとめられないとい
 うこと。


身体障害者手帳申請用の診断書などで、初診日から6月経過前たとえば3月経過時点で「症状固定」と書かれているケースがよくありますが、これは日本年金機構での「障害年金」の審査では認められませんので、合わせて注意が必要です。

結果

結果、申立てが認めれら、遡及して「障害厚生年金2級」に認定されました。

支給金額遡及分(4年4か月分)約1,092万円
年額約244万円

お客様も大変喜んでいらっしゃいました。
我々も、安堵すると共に、本当に良かったという思いでした。