化膿性脊椎炎による肢体の障害で障害年金を請求したお客様から「年金証書」到着のご連絡をいただきました

今日、「化膿性脊椎炎」による障害で「障害年金」の請求をしたお客様から「障害厚生年金1級」の「年金証書」が届いたとのご連絡がありました。
大変喜んでおられました。

当センターのホームページをご覧になってご相談を頂きました50代の男性のお客様でした。

今回のご相談の内容が非常に複雑であったために、お客様とは事前に電話で何回もお話をさせて頂き、その後Zoom によるオンライン面談をさせて頂きました。

お客様のお話をお伺いしますと、30年以上前の17歳の高校生の時に、オートバイで事故に合われ、脊髄損傷で下肢麻痺障害を負われ、20歳の時に、「20歳前傷病による障害基礎年金1級」を請求し、受給されていらっしゃいました。
その後、下肢の状態は変わらずでしたが、ご自分で自立した生活を送ってこられました。

それが約 2年前、ある時から高熱が続き、病院で診てもらうようにお願いをしましたが、コロナ禍もあり、なかなか受け入れてくれる病院がなく、2か月ほど経って、やっと病院で診てもらうと「化膿性脊椎炎」と診断され、即入院となり、生命の危機さえあるような深刻な状態でした。

懸命な治療により、一命は取り留め、症状も安定し、約3ヶ月の入院の後、退院をすることができました。
しかし一方で、背骨の一部が崩壊しており、今まで問題のなかった上肢(体幹)の保持ができなくなり横になる時間が長くなるなど、日常生活にも多くの不自由が発生し、同居されている高齢のお母様の援助を受け、なんとか生活をされているような状態でいらっしゃいました。

その後、何かの機会にお知り合いから、その方も元々肢体に障害を持たれて障害基礎年金を受給されていましたが、更に同じく肢体の障害を負われ障害厚生年金を請求した結果、併合認定され、障害厚生年金を受給できるようになったということをお聞きになったそうです。
自分も同じように、今回の会社勤めすなわち厚生年金加入中に「初診日」のある傷病による障害で障害厚生年金を請求できた場合に、障害厚生年金に併合認定されるのではないかと思われたのがきっかけだそうです。(障害厚生年金1級に併合認定された場合、年金額が上がるというメリットがあります)

そこで、年金事務所に何回かご相談されたそうですが、「すでに障害基礎年金1級を受給しているのに、なぜ再度障害年金を請求するのですか?」や「既に1級の障害年金を受給されているので無理です」など心無いことを言われたり、担当者によって言うことが違ったりと、なかなか的を得た回答が得られなかったそうです。

そんな時に当センターのホームページをご覧になり、お問い合わせいただきました。
当センターで最初にお問い合わせいただいた時は、正直我々も戸惑いました。
我々社会保険労務士は日頃から勉強は怠りませんが、そんなときに使う参考書であったり、参加するセミナーでも、元々障害基礎年金2級をお持ちで、その後障害厚生年金2級を負われ場合、障害厚生年金1級に併合認定され、 従来の障害基礎年金2級は失権するというような例は時折 見たり聞いたりはしていましたし、実際当センターで過去に請求手続きのサポートをさせて頂いたこともありましたが、今回のように障害基礎年金1級と 障害厚生年金 1級あるいは2級との併合認定というのは、経験したこともなく、見たり聞いたりしたこともありませんでした。

実際のところ、もともと障害年金を受給されている方の障害が増悪し、結果障害等級が上位等級に該当するいう額改定はそれほど珍しいことではありませんが、更に別傷病による障害を負われというケース自体少なく、更に今回の様に既に最上位等級である1級の障害年金を受給されている方が、更に障害を負われるというケースはまさにレアケースだと思われます。

下記の様に、法律の条文通り解釈しますと、今回のケースのように、 もともと障害基礎年金1級を受給されている方が更に障害厚生年金1級あるいは2級の障害を負われた場合は、障害厚生年金1級に併合認定され、もともと受給されていた障害基礎年金1級は失権処理されるということになると思われましたが、当センターでも初めてのケースでしたので、年金相談センターで確認することにしました 。

【国民年金法 第31条第1項】
障害基礎年金の受給権者に対して更に障害基礎年金を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害基礎年金を支給する。

【厚生年金保険法 第52条の2第1項】
障害厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給されるものを除く。)の受給権を有するに至つたときは、当該障害厚生年金の支給事由となつた障害と当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とを併合した障害の程度に応じて、当該障害厚生年金の額を改定する。

年金相談センターに確認しに行ったところ、担当者も分からない様で何やら調べに行ってくれましたが、結局分からず、「本部に確認して、連絡します」ということでした。
確かに、年金事務所や年金相談センターで使われている「障害年金事務の手引き」にも、障害基礎年金2級と障害厚生年金2級の併合認定については書かれていますが、今回の様な障害基礎年金1級と障害厚生年金1級の併合認定については書かれておらず、その担当者も即答できなかったものと思われます。
その後、その担当者から、「障害厚生年金1級に併合認定され、もともとの障害基礎年金1級は失権処理される」という本部での確認結果をご連絡を頂きました。

これで、「障害年金」を請求出来る(請求する意味がある)という基本的な問題は解決出来ましたが、一方で、今回のお客様の場合、元々の障害の原因となった傷病と今回新たに発生した障害の原因となった傷病の発生部位が非常に近いこと、その上障害自体も共に肢体の障害で、かなりオーバーラップするところも多いという難しさ(問題)がありました。

まず、もともとの障害の原因となった傷病と今回新たに発生した障害の原因となった症状との間に「相当因果関係」のないことを確認する必要がありました、なぜならもしこの2つの傷病に相当因果関係があれば、同じ障害(傷病)が増悪したことによる「額改定請求」ということになり、先の年金相談センターの担当者が言っていたように、すでに最上位等級である障害基礎年金1級を取得しており、これ以上障害等級が上がることはないからです。

次に、もともとの障害で負われていた肢体障害と今回新たに発生した障害による肢体障害が明確に区別できるかという問題があります、なぜならもし今回新たに発生した障害による肢体障害がもともとの障害による肢体障害と全て同じということになると、その肢体障害がもともとの障害によるものなのか?今回新たな障害によるものなのか?という 判断(認定)が困難になり、最悪日本年金機構での審査時に「症状混在」で診査(認定)出来ないということになりかねないからです。

そこで、主治医にお話を伺うことにしました。
名医で非常にお忙しい先生でいらっしゃり、お約束の時間から3時間半以待たされましたが、診察時間外の夜遅い時間にも関わらず、しっかりお話をお聞き下さり、「①もともとの障害の原因となった傷病と今回新たに発生した障害の原因となった症状との間に「相当因果関係」のないこと」および「②もともとの障害で負われていた肢体障害と今回新たに発生した障害による肢体障害が明確に区別できる」という点について確認することができ、診断書の作成に関しご協力頂けることになりました。
その後も、検査にはじまり診断書作成に関し、病院の皆さんに親切に対応、多大な協力頂き、思い描いていた素晴らしい診断書が完成しました。

合わせて、先の審査時に論点(争点)になるであろう2点について、さらに申立書を添付して、請求しました。

予想通り、日本年金機構の審査において、症状に関する返戻(照会)がありましたが、先の主治医に対応頂けました。

結果、請求から5か月以上掛かりましたが、こちらの申し立てが認められて、今回無事「障害厚生年金1級」に認定されました。
一方で従来受給されていました「障害基礎年金1級」は失権となりました。

お客様には大変喜んで頂けました。
結局、今回の新たな障害によってお仕事も辞めざるを得なくなっておられましたので、経済的な問題への対応に関し苦慮されていらっしゃったということでした。

我々も今回非常に複雑で難しい請求でしたので、正直どんな結果が出るか分からないというのが本音でしたが、最高の結果になり、安堵すると共にとても嬉しかったです。
非常に勉強になりました。

「障害年金」の請求手続きでは、今回のように複雑で難しく、我々に取っても初めてというような事案に突き当たりますが、当センターのモットーである「最後まであきらめません」を念頭に、労力を惜しまず、あらゆる可能性を模索しあらゆる手続き方法を使うことで問題を解決し、確実に「障害年金」が認定されるように常に最善を尽くします。